2024年8月5日のことは、よく覚えています。
月曜日の朝にスマホを開いたら、証券会社のアプリに通知が来ていて、日経平均が3,000円以上下落しているというニュースが流れていました。前の週の金曜日にアメリカの雇用統計が予想より悪かったことと、日本銀行の利上げ観測が重なって、大幅な下落が起きていました。最終的に日経平均は1日で4,451円下落して、リーマンショック以来最大の下落幅だったと記事で読みました。
私がNISAで積み立てているのは「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」で、2023年の秋から毎月3万円を積み立てていました。その日の朝に証券口座を確認すると、積立元本に対して評価額がマイナス2〜3万円くらいになっていました。
始めて以来、ずっと含み益があったので、初めてのマイナス表示でした。
正直なところ、最初の1〜2時間は焦りました。「全部売った方がいいのか」「もっと下がる前に逃げるべきか」という考えが頭をよぎりました。暴落時に感情的な売りをして後悔した事例は本で読んでいたのに、実際に目の前の数字がマイナスになると、冷静でいるのは想像していたより難しかった。
それでも売らなかった理由を、3つに整理すると以下のようになります。
1つ目:全世界株式の「全世界」に意味がある オール・カントリーに積み立てているのは、特定の国や企業の判断をせずに済むからです。日本株だけが暴落しても、他の国で補われる構造になっている。今回も、日本株の下落が大きかった一方で、米国株は日本ほど大きく下落していませんでした。「どれが上がってどれが下がるかわからないから全部持つ」という設計は、暴落時にも有効だと実感しました。
2つ目:積み立てる期間がまだ20年以上ある 私は30代前半で、NISAを使い続けるつもりの期間はあと20〜25年あります。10年・20年というスパンで見ると、過去の相場はほぼ右肩上がりで回復してきた記録がある。今の下落が「一生続く」可能性は低い。この視点があると、短期的な下落で判断を変える必要が薄れます。
3つ目:今売ると損が確定する 当たり前のことですが、含み損の状態で売ることは、損失を確定させることを意味します。売らない限り「まだ評価額が下がっているだけ」で、実際に損をしたわけではない。逆に、下落局面では積み立てによって安い価格でも口数を買い増せているという側面もあります。
結果として、2024年の秋から冬にかけて相場は回復し、年末には積立元本に対して含み益がある状態に戻りました。売らずにいたことは正解だったと思います。ただ、「正解だった」とわかるのは後からのことで、あの時点では正解かどうかはわかりませんでした。
投資のリスクとは「下落する可能性」ではなく「下落したときに感情的な行動を取ってしまうこと」だと言われます。実際に自分のお金がマイナスになる体験をして、その意味が少し具体的に理解できた気がします。
積立投資は「感情に動かされず続ける」ことが本質なのだと、教科書ではなく自分の経験として理解できたことが、この暴落から得た最大の学びでした。
その後どうなったか
2024年8月の暴落から数ヶ月が経ち、年末にかけて相場が回復したことは本文でも触れました。その後の状況を少し補足しておきます。
2024年の年末時点で、積立を始めてから1年3ヶ月が経過していました。積立元本に対する評価額の差は、プラス17〜18%ほどになっていました。8月の暴落前がプラス12%くらいだったので、最終的にはあの暴落があったにもかかわらず資産は増えた結果になっています。
ただ正直に書くと、回復していく過程でも「今のうちに一部を利確しておいた方がいいんじゃないか」という誘惑は何度かありました。「高値で売って安値で買い直す」という戦略を試みたくなる感覚は、特に相場が上がっているときに出てきます。でもその都度「自分にはタイミングを読む能力はない」と言い聞かせて、淡々と積み立てるだけにしました。
2025年に入ってからも同じペースで積立を継続しています。月3万円の積立は変えていません。
やってみてわかったこと
暴落を経験して一番変わったのは、「下落は想像より怖い」という事実を身体で理解したことです。
本で「暴落時は感情的に売ってはいけない」と何度読んでも、実際に自分のお金がマイナスになる場面を経験しないと、その意味はなかなか実感できません。2024年8月の下落は、私にとってその実体験を積む場でした。
あの日、売ろうと思わなかったわけではありません。「全部解約して現金に戻した方がいいんじゃないか」と何度も考えました。それでも実際に売らなかった理由は、「下落の底がどこかは誰にもわからない」「売ってしまったら回復局面に乗れない」という2点を冷静に考えられたからだと思います。
ひとつ気づいたことは、積立額が少ないうちは暴落の影響が小さいということです。当時の積立元本は40万円ほどで、マイナスになった金額は2〜3万円でした。これが元本500万円だったら、50〜75万円のマイナスになっていた計算です。経験値を積む機会として、積立を始めて1〜2年以内に暴落を経験できたのは、長期的に見るとよかったかもしれません。
同じ状況の人へのアドバイス
もし今、NISAや積立投資を始めたばかりで評価額がマイナスになっていてつらいという人がいれば、一つだけ伝えたいことがあります。
「含み損は確定した損失ではない」ということです。評価額が下がっていても、売らない限りそれは帳簿上の数字に過ぎません。長期・分散・積立という前提で始めているなら、短期の下落で判断を変える必要はないはずです。
もちろん、売りたくなる気持ちは自然なことです。私もそうでした。でもその「売りたい」という感情は、冷静に考えると「損を確定させたい」という行動に繋がっています。その気持ちが湧いてきたら、一度口座のアプリを閉じて、何日か置いてから判断するだけで、感情的な行動を防ぎやすくなります。長期的な視点を持ち続けることが、積立投資を続けるうえで一番大切なことだと思っています。
本記事は情報提供を目的としており、投資を推奨するものではありません。投資の判断はご自身の責任で行ってください。