手取りが増えない中で「もっと稼がないと貯金できない」と思い込んでいる会社員は多い。だが本書が示すのは、収入の大小よりも「お金の流れの設計」が貯金の可否を決めるという事実だ。著者の節約オタクふゆこは、元々お金が貯められない側の人間だったと明言しており、その等身大の出発点が本書をリアルなものにしている。給与明細を見るたびに不安を感じる会社員が、仕組みを整えることで手取り変わらずに資産を積み上げていく方法を、具体的かつ再現性高く解説した一冊だ。

「貯金はこれでつくれます」とはどんな本か

著者の節約オタクふゆこは、YouTubeチャンネルでの節約・資産形成に関する情報発信で知られる。チャンネル登録者数は数十万人規模に達しており、「節約=我慢」ではなく「節約=仕組みの設計」という視点で多くの共感を集めてきた。本書はその知見を体系的にまとめたもので、動画では伝えきれない細かい手順とマインドセットの転換を丁寧に記述している。

本書の基本的な立場は明確だ。貯金できない理由は「意志が弱いから」でも「収入が低いから」でもなく、「仕組みがないから」という一点に尽きる。この前提に立つことで、精神論ではなく行動の設計として節約を捉え直すことができる。貯金を「残ったお金を貯める」から「先に取り分けるお金を決める」へとリフレームする視点は、本書全体を貫く核心だ。

また本書は節約を「固定費の見直し」「変動費の管理」「貯蓄の自動化」という3つの柱で構造化しており、何からどの順番で手をつければよいかが明快だ。感情や気分に頼らず、一度設定してしまえば機能し続ける仕組みを作ることに重点を置いている点が、他の節約本と異なる実用的な強みだ。

会社員が押さえるべき3つのポイント

ポイント1:固定費の削減が最優先——毎月の努力なしに効果が続く

節約の打ち手には「毎月努力が必要なもの」と「一度変えれば終わりのもの」がある。本書が最初に固定費削減を推すのは、後者だからだ。スマホ代、保険料、サブスクリプション、家賃——これらは一度見直せば翌月以降も自動的に節約が積み上がる。

会社員が特に見落としやすいのが通信費と保険だ。大手キャリアのスマホを使い続けている場合、格安SIMへの切り替えで月3,000〜5,000円の削減が現実的に起こりえる。保険は「なんとなく入っている」状態のまま見直していないケースが多く、不要な特約が含まれていることも少なくない。本書はこれらを具体的に洗い出すための考え方を示している。

固定費は「削るべき場所が明確で、かつ効果が継続する」という点で変動費(食費・外食費など)より先に手をつける価値がある。食費を毎月100円削る努力より、スマホ代を月3,000円下げる一度の手続きのほうが年間で見れば圧倒的に大きい。

ポイント2:先取り貯蓄で「貯まる構造」を強制的に作る

本書の中心的な処方箋が「先取り貯蓄」だ。給与が入ったら使う前に一定額を別口座に移してしまい、残った分で生活する仕組みを作る。これにより「余ったら貯める」という構造を「先に確保して残りで暮らす」に変換できる。

会社員にとって実践しやすいのは、給与振込口座と貯蓄口座を分け、給与日の翌日に自動振替を設定することだ。多くのネット銀行では自動振替の設定が無料でできる。月3万円を先取りするだけでも、1年で36万円が意識せずに積み上がる計算になる。「続けられるか不安」という人ほど、意志力ではなく自動化に任せる仕組みが有効だと本書は繰り返し強調する。

また本書は先取り額の決め方についても現実的なアドバイスをしている。最初から高い目標を設定して挫折するより、「無理なく続く額から始める」ことを重視している。小さな成功体験が習慣化を支えるという考え方で、精神論ではなく行動設計として節約を捉えている点が一貫している。

ポイント3:節約マインドの転換——「我慢」から「選択」へ

本書が他の節約本と一線を画すのは、お金の使い方に関するマインドセットの扱いが丁寧な点だ。節約を「我慢して削る」と捉えている限り、ストレスが溜まって反動消費が起きやすい。本書はこれを「自分が本当に価値を感じるものに使う」という選択の問題として再定義している。

会社員が実感しやすい例として、コンビニの無意識買いが挙げられる。「コンビニに寄らない」と禁止するのではなく、「何のために何に使うかを意識する」ことで、本当に必要な出費と惰性の出費が自然と分別できるようになる。この考え方は本書を通じて繰り返されており、節約を持続可能なものにするための精神的支柱になっている。

価値観に基づいた消費判断は、長期的に見て節約の継続率を高める。使いたいものに使い、使わなくていいものを削る——このシンプルな原則が、数年単位で資産を積み上げる土台になる。

この本が向いている人・向いていない人

向いている人

  • 毎月給与は入っているのに、月末には残高がほぼゼロになる
  • 節約しようと思っても何から手をつければいいか分からない
  • 一度試したが続かなかった経験がある
  • 家計簿は苦手だが、仕組みで解決したい
  • 節約=辛いものという先入観を持っている

向いていない人

  • 既に固定費の見直しと先取り貯蓄を実践しており、節約の基礎はできている
  • 投資や資産運用の具体的な手法を学びたい
  • 家計管理の細かい数字管理・エクセル分析まで踏み込みたい

本書は節約の入口として優れているが、投資戦略や税金対策といった資産形成の次のステップについては扱いが薄い。「貯まる仕組みを作ること」に特化しているため、すでにその段階を超えた人には物足りなく感じる可能性がある。また、著者の生活スタイルや支出の優先順位が読者のそれと大きく異なる場合、具体例がそのまま使えないこともある。ただし考え方の枠組みは汎用性が高く、自分の状況に当てはめて応用することは十分に可能だ。

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読んだ後にやること

1. 固定費を全て書き出して「削れるもの」を1つ決める

スマホ、保険、サブスクリプション、光熱費の支払い先を通帳やカード明細で確認し、一覧化する。その中から「今月中に見直す1つ」を選んで手続きを完了させる。全部一気にやろうとすると動けなくなるため、まず1件に絞ることが肝心だ。見直した固定費の削減額が毎月の確定節約額になる。

2. 貯蓄専用口座を開設して自動振替を設定する

給与振込口座とは別に貯蓄専用のネット銀行口座を開設し、給与日翌日に一定額が自動で移動する設定を入れる。金額は無理なく続けられる額から始める——最初は月1万円でも構わない。「設定する」というアクション自体が、先取り貯蓄を仕組みとして稼働させる第一歩だ。

3. 直近1ヶ月の支出を振り返り「価値を感じていない出費」を1つ止める

クレジットカードの明細や銀行の出金履歴を眺め、「これ、本当に必要だったか?」と問いかける。使ったことを忘れていたサブスクや、惰性で続けているサービスが1つ見つかれば、解約するだけで翌月から自動的に節約が発生する。

億速が実際に読んで試したこと

節約の本を読んでも続かないのは「意志の問題」だと思っていました。この本を読んで「仕組みの問題」だと気づかされたのが最初の変化でした。

すぐやったのはサブスクの棚卸しで、書き出してみたら月7,200円もかかっていました。ほぼ使っていないフィットネスアプリと読み放題を解約して月2,460円を削減。先取り貯金は月2万円で設定したものの、最初の2ヶ月は生活費が足りなくなって一時的に1万5千円に下げました。4ヶ月目から2万円に戻して、今は安定しています。

節約を「我慢する」ではなく「選択する」と考えるだけで、続く確率が上がります。「節約しようとするとつらい」と感じたことがある会社員に特に刺さる一冊です。

まとめ

『貯金はこれでつくれます』が会社員に示すのは、意志力や収入の増加に頼らず、仕組みの設計によって貯金を機能させるという方法論だ。

  • 固定費を一度見直すだけで、毎月の努力なしに節約効果が積み上がる
  • 先取り貯蓄の自動化により、「残ったら貯める」から「先に確保する」構造に転換できる
  • 我慢ではなく選択という視点が、節約を長期的に継続させる精神的な支えになる

実践のハードルが低く、再現性の高い内容が揃っており、「節約しなければ」と思いながら一歩踏み出せていない会社員が最初に読む本として適している。複雑な計算や高い自制心を必要とせず、「設定して仕組みに任せる」というアプローチが本書の最大の強みだ。

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