2026年から新NISAの制度に三つの改正が加わった。最も大きな変化は「非課税枠の当年復活」で、売却した枠を翌年まで待たずに同年内に再利用できるようになった。つみたて投資枠の対象商品も債券・バランス型まで広がり、「株式は怖い」と躊躇していた会社員にも入りやすくなった。年収300〜700万円層が最もメリットを受けやすいとされる今回の改正、使い方のポイントを数字で確認していく。
仕組み・背景を正確に把握する
新NISAとは(おさらい)
2024年1月にスタートした「新NISA」は、年間360万円(つみたて枠120万円+成長投資枠240万円)まで非課税で投資でき、生涯の非課税上限は1,800万円。売却益・配当金にかかる通常約20.315%の税が0%になる制度だ。
2026年改正の3つのポイント
① 非課税枠の「当年復活」
これまで: 売却した年の非課税枠は翌年1月に繰り越して復活 2026年〜: 売却した当年中に枠が戻り、同年内に再投資可能
例えば、3月に成長投資枠で保有する100万円の株式を売却した場合、従来は翌年1月まで枠は復活しなかった。改正後は4月以降にその100万円分を使って新たな銘柄を購入できる。
② つみたて投資枠の対象商品拡充
従来は「主に国内外の株式に投資する」投資信託に限られていた。2026年の改正で「株式または公社債に投資するもの」まで対象が広がり、債券比率の高いバランス型ファンドも選択肢に加わった。
③ こどもNISA(2027年1月〜)
0〜17歳を対象に、年間60万円・生涯600万円の非課税枠が新設される。12歳以降は払い出しも可能なため、大学進学費用の準備に活用しやすい構造になった。
なぜ「当年復活」が重要か
年間投資上限(360万円)を超えない範囲で自由に売買を繰り返せるようになる、というわけではない。正確には「生涯1,800万円の非課税枠のうち、売却した部分が当年中に戻る」という仕組みだ。ポートフォリオのリバランスや、まとまった資金が必要になった場合に「NISA枠を維持しながら動かせる」メリットが生まれた。枠の拘束期間が最大12ヶ月から数ヶ月単位に短縮されるのは確実な前進といえる。
具体的な数字で試算する
改正前後の比較表
| 項目 | 2025年まで(改正前) | 2026年〜(改正後) |
|---|---|---|
| 非課税枠の復活タイミング | 翌年1月以降 | 売却した当年内 |
| つみたて枠の対象商品 | 株式投資信託(主に) | 債券・バランス型も対象 |
| 年間上限(つみたて枠) | 120万円 | 120万円(変更なし) |
| 年間上限(成長投資枠) | 240万円 | 240万円(変更なし) |
| 生涯非課税枠 | 1,800万円 | 1,800万円(変更なし) |
| 18歳未満の利用 | 不可 | 2027年〜可(年60万円) |
制度の枠自体は変わらない。変わるのは「使い方の自由度」だ。
年収別・20年積立の試算(目安)
以下は年収別に毎月の積立額を変えた場合の20年後の資産試算。想定利回りは年5%(インデックスファンドの過去平均に近い水準。将来の運用成果を保証するものではなく、あくまで計算上の目安)。
| 年収目安 | 毎月積立額 | 20年後の試算額(非課税) | 課税口座との税負担差(概算) |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 3万円 | 約1,234万円 | 約51万円の差 |
| 500万円 | 5万円 | 約2,057万円 | 約85万円の差 |
| 700万円 | 10万円 | 約4,115万円 | 約170万円の差 |
※税負担差は利益部分に対する20.315%(所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%)を元に試算。実際の税額は個別の状況による。
「当年復活」活用の試算例
年収500万円の会社員が6月に成長投資枠の株式100万円を売却した場合:
- 改正前: 翌年まで100万円分の枠が使えない → 下半期の投資機会に枠を使えない
- 改正後: 同年7月以降に100万円分を再投資可能 → 同一年内でリバランスが完結
市場タイミングによる差は断言できないが、「枠が縛られて動けない」状態がなくなる点は確実な改善だ。
今すぐやること4つ
1. 証券口座の「当年復活」対応状況を確認する
大手ネット証券(SBI証券・楽天証券など)は順次システム改修を進めている。自分の口座がいつから対応するかを、アプリまたはWebサイトのお知らせで確認する。2026年内に対応予定の証券会社が多いが、時期は各社によって異なる。
2. つみたて枠の積立設定をレビューする
現在の積立対象が株式100%のファンドなら、商品拡充後に債券組み入れ比率の高いバランス型ファンドも候補に加わる。自分のリスク許容度・投資期間・目的に合わせて設定変更を検討する。特に「老後20年以上先」なら株式比率を高く維持するのが一般的な考え方だが、「5〜10年以内に使う予定がある」ならバランス型という選択肢が現実的になる。
3. 生涯非課税枠の残高を把握する
証券口座の管理画面で「NISA年間投資枠の使用状況」と「生涯残枠」を確認する。1,800万円の生涯枠のうち何円残っているかを把握することが、今後の戦略を立てる起点になる。特に2024年・2025年に一括投資した人は残枠が少ない場合もある。
4. 売却タイミングの自分ルールを決める
「当年復活」によって「一度売ったら枠が消える」という心理的ブレーキが緩和される。あらかじめ「利益が30%を超えたら一部利確する」「特定の銘柄が全体の40%を超えたらリバランスする」など自分なりのルールを設けておくと、感情的な判断を防ぎやすい。ルールは単純なほど実行しやすい。
まとめ
2026年のNISA改正で会社員が実感しやすいメリットは次の2点に集約される。
- 非課税枠が当年中に復活するため、ポートフォリオのリバランスが1年以内で完結する
- 債券・バランス型ファンドも選べるようになり、リスク分散の選択肢が増えた
年収500万円で月5万円・20年積立の試算では、課税口座との差は約85万円。この差を積み上げるために必要なのは「制度を理解して使い続けること」だけだ。
制度の枠(年360万円・生涯1,800万円)は変わらない。変わったのは「使い方の自由度」。まず自分の口座の残枠確認と、積立設定の見直しから着手するのが最短ルートだ。