2026年度の税制改正により、NISAのつみたて投資枠の対象商品が「主に株式または公社債(債券)に投資するもの」へと拡大された。これまで「主に株式に投資するもの」に限定されていたが、債券ファンドや株式・債券を組み合わせたバランス型ファンドも新たに対象に加わる。「株価の変動が怖くて投資に踏み出せなかった」という会社員にとって、リスクを抑えながら非課税の恩恵を受けられる選択肢が大きく広がった改正だ。さらに0〜17歳向けの未成年NISAも解禁され、子どもを持つ会社員には家族ぐるみで資産形成できる環境が整いつつある。

仕組み・背景を正確に把握する

現行NISA(2024年〜)の基本構造

現行の新NISAは2024年からスタートし、以下の2つの投資枠で構成されている。

  • つみたて投資枠:年間120万円まで。長期・積立・分散投資を目的とした投資信託が対象
  • 成長投資枠:年間240万円まで。個別株・ETF・幅広い投資信託が対象
  • 年間合計上限:最大360万円
  • 生涯非課税保有限度額:1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)

通常、投資で得た利益(配当金・売却益)には20.315%の税金(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)がかかる。NISA口座で保有している限り、これが0%になる。

2026年改正の核心:つみたて投資枠に債券ファンドが追加

従来のつみたて投資枠は対象商品を「主に株式に投資するもの」に限定していた。2026年度税制改正により、この要件が「主に株式**または公社債(債券)**に投資するもの」へと緩和される。

公社債(債券)とは: 国・地方自治体・企業が資金調達のために発行する有価証券。株式と比較して価格変動が小さく、満期に元本と利息が戻る仕組みのため、一般に株式よりリスクが低い資産クラスとして分類される。

この変更により、つみたて投資枠で購入可能な商品として想定されるのは以下の通り。

  • 国内外の債券に投資する投資信託
  • 株式と債券を組み合わせたバランス型投資信託(例:株式50%+債券50%)
  • 債券比率を高めた低リスク型ファンド

なぜ今この改正が必要だったのか

日本が利上げ局面に入り、国内外の債券利回りが上昇している。これまで「投資=株式」という認識が強く、株価変動を恐れて資産形成を避けてきた会社員は少なくない。金融庁はこうした層を非課税の仕組みに取り込み、より幅広い世代が長期の資産形成に参加できる環境を整える狙いで今回の改正を推進した。また同時に、0〜17歳の未成年向けNISA(年間60万円・生涯600万円)も解禁され、家族全体での資産形成が可能になった。

具体的な数字で試算する

会社員にとって最も重要なのは「実際いくら得するのか」という実感だ。年収別・条件別に20年間の運用試算を示す。

前提条件

  • 運用期間:20年間
  • 想定年利回り:3%(保守的試算)・5%(標準的試算)
  • 非課税メリット=課税口座(税率20.315%)で同額を運用した場合の税負担との差額
  • 数字はあくまで試算の目安。実際の運用成果を保証するものではない

年収・積立額別の20年後の運用額(年利5%時)

年収の目安月の積立額20年後の運用額(年利3%)20年後の運用額(年利5%)非課税メリット(年利5%時の目安)
400万円月3万円約985万円約1,233万円約47万円
500万円月5万円約1,642万円約2,055万円約79万円
600万円月8万円約2,628万円約3,288万円約126万円
700万円以上月10万円(上限)約3,284万円約4,110万円約158万円

※非課税メリットは「NISA口座での運用益」と「課税口座での税引き後の運用益」の差額の目安。

2026年改正前後の比較

比較項目改正前2026年改正後
つみたて投資枠の対象商品主に株式投資信託のみ株式+債券ファンドに拡大
バランス型(株式+債券)の購入対象外(条件を満たさず)新たに対象に追加
0〜17歳のNISA利用不可年間60万円・生涯600万円まで可
本人の生涯限度額1,800万円1,800万円(変更なし)
成長投資枠の限度額1,200万円1,200万円(変更なし)
年間最大投資額(本人)360万円360万円(変更なし)

ファンドタイプ別のリスク・リターン比較(目安)

ファンドタイプ期待リターン(年・目安)過去の最大下落率(目安)向いている会社員像
全世界株式100%年5〜7%▲40〜50%30〜40代・長期運用・価格変動を気にしない
株式50%+債券50%年3〜5%▲20〜30%住宅ローン返済中・子育て期でリスクを抑えたい
債券中心80%年1〜3%▲10〜15%50代以降・定年前に安定重視

※過去の実績は将来の運用成果を保証しない。

今すぐやること3つ

1. NISA口座を持っていない人:今週中に口座開設の手続きを始める

NISA口座は1人1口座のみ。開設の審査・書類手続きから実際に積立が始められるまで、早くても1〜2週間かかる。「やろうと思っていた」で止まっている人は、今週中にアクションを起こすのが先決だ。

  • SBI証券:口座開設数No.1。つみたて投資枠の対象ファンドも豊富
  • 楽天証券:楽天ポイントを積立に充当できる。楽天経済圏を使っている会社員に最適
  • 開設費・口座維持費はいずれも無料

2. 既存ユーザー:2026年の対象拡大を機にファンド設定を見直す

すでにNISAを使っている会社員は、2026年から選べる商品が増えるタイミングを利用して積立ファンドを再点検する好機だ。以下のチェックポイントを確認する。

  • リスク許容度が変化した場合(転職・育児・住宅ローン開始など):株式100%からバランスファンドへのシフトを検討
  • 積立額を増やせる余地がある場合:毎年1〜2万円ずつ引き上げる「ステップアップ積立」で上限(月10万円)に近づける
  • 2026年に新たに追加されるバランス型ファンド:各証券会社の対象商品リストが更新されるタイミングで選択肢を確認する

3. 子どもがいる会社員:0〜17歳向け未成年NISAを検討する

2026年改正で解禁された未成年向けNISAは、教育資金・将来の自立資金の形成に直結する。

  • 子ども1人あたり年間最大60万円が非課税で運用可能
  • 0歳から始めた場合:18年間×60万円=元本1,080万円
  • 年利3%・18年間の試算:約1,500万円(元本比+約390万円)
  • 使途に制限なし。大学費用・留学・社会人スタート時の資金にも充当できる

子どもが複数いる家庭では、その人数分だけ非課税枠が増える点が大きなポイントだ。

まとめ

2026年のNISA改正で会社員が押さえるべきポイントは3点に集約される。

  1. つみたて投資枠の対象拡大:債券ファンド・バランスファンドが追加。リスクを抑えた積立が非課税で可能になった
  2. 未成年NISAの解禁:子どもを持つ会社員は年間60万円×子どもの人数分を活用できる新しい武器が加わった
  3. 非課税の複利効果は想像以上:月10万円・年利5%・20年の試算では、課税口座との差が約158万円に達する

「株が怖くて一歩踏み出せなかった」という会社員にとって、今回の改正は投資デビューの大きな後押しになる。リスクを抑えたバランス型ファンドから少額で始め、収入・家族構成・ライフイベントに合わせて積立額を調整していくのが現実的な道筋だ。まず口座を開設し、月3,000円でも始めることが、20年後の差を生む。