会社員になった年、親に勧められるまま終身保険に入った。月額2万2,000円。「解約返戻金があるから保険料がもったいなくない」と言われ、深く考えずに署名した記憶がある。その後、医療保険とがん保険も別々に契約して、保険料の合計はいつの間にか月3万1,000円を超えていた。手取り収入の約6%を保険に払い続けていた計算になる。

転職を機に家計を見直したとき、保険証券を全部並べてはじめて気づいた。整理してみると、定期保険と医療保険だけで十分だということが。終身保険を払済に変更し、がん保険を解約したことで月額は1万2,500円まで下がった。年間差額は約22万円。証券を並べて半日かけた作業の成果としては、かなり大きかった。

2026年4月、日銀の利上げを受けた予定利率の改定で複数の保険会社が保険料を見直した。今の契約が最安とは限らないタイミングに入っている。この記事では、会社員が陥りやすい「入りすぎパターン」を整理し、手順ごとに見直す方法を解説する。


仕組み・背景を正確に把握する

生命保険の種類は大きく3つ

生命保険には主に3種類ある。終身保険、定期保険、収入保障保険だ。

終身保険は一生涯保障が続き、解約返戻金がある。貯蓄性を持つ反面、保険料が高い。30歳男性・死亡保障1,000万円のプランで月1万8,000〜2万5,000円程度が目安。

定期保険は期間を定めた掛け捨て型で、同じ保障額でも月3,000〜5,000円程度と大幅に安い。子育て期間中だけ大きな死亡保障が必要な会社員に向いている。

収入保障保険は死亡時に毎月一定額を受け取る保険で、「稼ぎ手が亡くなった場合に家族の生活費を補う」用途に特化している。月2,000〜4,000円程度で加入できる。

会社員が「入りすぎ」になる3パターン

① 学生・新社会人期に加入した終身保険の放置

独身・子なしの時期に加入した終身保険をそのまま継続しているケース。死亡保障の必要性が低い時期に高コストの保険を何年も払い続けている。

② 医療保険とがん保険の重複加入

医療保険でがんの入院・手術費もカバーできる場合が多い。別途がん保険を追加するのは重複になりやすい。10年前に「がんが怖くて追加した」という記憶のある人は要確認。

③ 特約の積み上がり

基本保険に「災害割増特約」「入院特約」「三大疾病特約」などが積み重なって保険料が膨らんでいる。5〜10年前に加入した契約はこのパターンが多い。

高額療養費制度を把握する

会社員には健康保険の高額療養費制度がある。1ヶ月の医療費自己負担が一定額を超えると、超過分が還付される制度だ。年収500万円前後の会社員であれば、月の医療費自己負担の上限は約8万100円+α。数十万円かかる手術でも、実際の自己負担は8〜9万円台に抑えられる。

これを知らないまま「高額な治療費が心配だから」と手厚い医療保険・がん保険を複数掛けているケースは多い。公的保険の範囲を把握するだけで、民間保険の必要額が半分以下になることもある。


具体的な数字で試算する

保険タイプ別のコスト比較(30歳男性・非喫煙の場合)

保険タイプ月額保険料の目安保障内容会社員への適性
終身保険18,000〜25,000円死亡1,000万円+解約返戻金△ 高コスト・NISAで代替検討
定期保険(20年)3,000〜5,000円死亡3,000万円(掛け捨て)◎ 子育て期に最適
収入保障保険2,000〜3,500円月10万円×最長15年◎ 住宅ローン持ちに有効
医療保険2,000〜3,000円入院日額5,000円・手術給付○ 1本に絞るのが基本
がん保険2,000〜4,000円がん診断一時金100万円等△ 医療保険との重複確認

(業界平均・各社公開シミュレーションをもとに試算。実際の保険料は健康状態・保険会社・プランにより異なる)

見直し前後の試算例

【ケース①:年収500万円・30代・子供1人・住宅ローンあり】

  • 見直し前:終身保険(月2万2,000円)+医療保険(月2,500円)+がん保険(月3,000円)=月2万7,500円/年間33万円
  • 見直し後:収入保障保険(月3,500円)+定期保険(月4,000円)+医療保険(月2,500円)=月1万円/年間12万円
  • 差額:年間21万円

【ケース②:年収400万円・30代・独身・賃貸】

  • 見直し前:終身保険(月1万8,000円)+医療保険(月2,500円)=月2万500円/年間24万6,000円
  • 見直し後:医療保険(月2,500円)のみ=月2,500円/年間3万円
  • 差額:年間21万6,000円(独身・住宅ローンなし・扶養家族なしの場合、大きな死亡保障は不要)

住宅ローンを抱える会社員は団体信用生命保険(団信)に加入済みの場合が多い。団信で死亡時のローン残高が相殺されるため、別途の大型死亡保障の必要性は大幅に下がる。この点を見落としたまま死亡保障を厚くしているケースは特に注意。


今すぐやること4つ

① 保険証券を全部並べる(目安:15分)

引き出しや棚にしまったままの保険証券を全部出す。証券が見当たらない場合は、クレジットカード・銀行口座の引き落とし明細で「保険料」「生命保険」の項目を探すと契約中の保険が特定できる。保険会社名・商品名・月額保険料・主な保障内容・特約一覧を紙一枚にまとめる。この一覧表を作ることが最初の一歩。

② 団信・高額療養費制度の適用範囲を確認する(目安:10分)

住宅ローンがある場合は、借入先の金融機関に「団信の保障内容」を問い合わせるか、契約書を確認する。また、勤務先の健康保険組合のウェブサイトで高額療養費制度の自己負担限度額を確認する。年収ごとに異なる上限額を把握するだけで、「民間保険でカバーすべき範囲」が具体的に見えてくる。

③ オンラインで保険料の一括見積もりをとる(目安:30分)

複数の保険会社を一括比較できるサービスを使い、現在の保険料と新しいプランの差額を確認する。電話・対面なしでオンライン完結できるサービスが増えており、保険証券を手元に用意すれば30分以内で差額試算が可能。見積もり結果が出たら「月額差額×12ヶ月×残り就業年数」で生涯節約額を計算する。年間9万円の差額でも、30歳から60歳まで続けると270万円になる。

④ 終身保険は「解約」より先に「払済」を検討する

終身保険を解約する場合、払込保険料に対して解約返戻金が下回る「元本割れ」になる期間がある。加入から10年未満は特に注意が必要。「払済保険」に変更すると、以降の保険料支払いをゼロにしながら死亡保障を縮小した形で継続できる。解約を決める前に保険会社へこの選択肢を確認する。


まとめ

保険の見直しは「やるべきとわかっているが後回しにしていた」筆頭タスクだった。自分の場合、加入から7年間放置した。始める壁のひとつは「保険証書がどこにあるかわからない」という単純な理由だったと思う。引き出しをひとつ開けるところから始まる。

会社員に必要な保障はシンプルだ。子供が独立するまでの死亡保障と、高額療養費制度を補完する程度の医療保険。それだけで十分なことが多い。貯蓄型の終身保険は解約返戻金が魅力に見えるが、NISAの非課税枠を使った積立のほうが長期リターンで上回る試算が多くなっている。

整理して空いた保険料を毎月NISA積立に回す。年間9万円の差額を20年間・年利5%で運用すると複利効果で約186万円になる試算だ。「保険を整理してNISAへ回す」は、節約と資産形成を同時に進める最短ルートだと思っている。