新NISAで成長投資枠を使い始めてから半年後、証券口座の配当明細を見て固まった。「税引後」の文字と、20.315%分の控除額。NISAは非課税のはずだと思って買ったのに、なぜ引かれているのか。

原因は「配当金の受取方法」の設定だった。特定の受取方式を選んでいないと、NISAで保有している国内高配当ETFの配当金でも、通常口座と同じく約20%の税金が引かれる。設定画面を開いてから変更まで5分もかからなかったが、翌年の配当明細で「税引後」の文字が消えたとき、初めて実感した。それだけで年間1.5万円以上の手取りが変わっていた。

高配当株・高配当ETFを成長投資枠で積み上げているなら、まず配当金の受取設定を確認する。投資銘柄の選定より先にやるべきことだ。

仕組み・背景を正確に把握する

NISAの「非課税」は、すべての場面で自動適用されるわけではない。売却益(譲渡益)はNISA口座で保有している間は自動的に非課税になるが、配当金・分配金については条件を満たした場合のみ非課税扱いになる。

配当金の受取方式は3種類ある

国内株式・国内ETFの配当金には、証券会社側で選択できる3つの受取方式がある。

①株式数比例配分方式 保有株数に応じて証券口座に直接配当が入金される。NISA口座で保有している株の配当はこの方式でのみ非課税になる。証券会社のマイページから設定変更できる。

②配当金領収証方式 証書が郵送され、郵便局の窓口で現金受取。NISA口座で保有している株の配当でも、この方式だと20.315%が課税対象になる。

③登録配当金受領口座方式 指定した銀行口座に振り込まれる。こちらもNISA口座分の配当が20.315%課税される。

「①株式数比例配分方式」以外を選んでいると、NISAで保有していても配当金は課税扱いのまま。新NISA口座の開設時に受取方式の設定を求められないケースもあるため、気づかないまま放置している会社員が少なくない。

なぜこのような仕組みになっているのか

配当金の非課税は、証券会社が「この配当はNISA口座の株から発生した」と識別できる仕組みが前提になる。①の株式数比例配分方式だけが証券口座経由で入金されるため識別可能で、②③の方式では証券会社側でNISA分の識別ができない。制度設計上の仕様だが、一般への案内が十分でなく、見落としやすいポイントのひとつになっている。

米国株ETFには別の注意点がある

S&P500系ETFや米国高配当ETF(VYM・HDV・SCHD等)の配当金は、米国側で10%の源泉徴収が発生する。NISAでは外国税額控除が利用できないため、米国株ETFの配当は「日本では非課税・米国では10%課税」という状態になり、完全非課税にはならない。国内高配当ETF(1489・1577・2564等)のほうが配当の非課税メリットを最大化しやすい点を頭に入れておきたい。

具体的な数字で試算する

成長投資枠の投資額と配当利回り3%で試算すると、設定ミスによる年間損失は以下のとおりになる。

成長投資枠の投資額年間配当(利回り3%)誤設定時の手取り正しい設定時の手取り年間損失
100万円3万円約2.4万円3万円約0.6万円
300万円9万円約7.2万円9万円約1.8万円
600万円18万円約14.4万円18万円約3.6万円
1,200万円(成長投資枠上限)36万円約28.7万円36万円約7.3万円

※税率20.315%で試算。利回りは年によって変動する。あくまで目安の数字。

積立投資枠でインデックス型の投資信託(eMAXIS Slim全世界株式等)を積み立てているだけであれば、分配金が出ないケースが多いため今回の設定は関係ない。ただし成長投資枠で国内高配当ETFや個別の高配当株を保有しているなら、設定確認は優先度が高い。

成長投資枠の上限1,200万円を高配当ETFで埋めた場合、設定ミス1つで年間7万円超が課税に消える計算になる。20年間保有し続けると累計損失は140万円を超える試算だ。設定変更にかかる時間は5分以内。どちらが優先度の高いアクションかは明らかだ。

会社員が成長投資枠300万円を国内高配当ETF(利回り3%)で持っているケースで見ると、設定変更前後で年間約1.8万円の差が出る。これを配当再投資で30年間複利運用すると(再投資利回り3%想定)、累計で70万円超の差につながる試算になる。

今すぐやること3つ

1. 証券口座の「配当金受取方法」を確認・変更する

SBI証券の場合:「口座管理」→「お客さま情報の確認・変更」→「配当金の受取方法」で「株式数比例配分方式」を選択。 楽天証券の場合:「マイメニュー」→「口座管理」→「配当金・分配金の受取設定」から変更できる。 変更自体は5分以内で完了する。変更後は次回の配当支払い分から適用され、過去分への遡及はできない。

2. 保有高配当ETFが国内か米国かを把握する

国内高配当ETF(銘柄コード4桁、例:1489・1577・2564)は設定変更によって配当が完全非課税になる。 米国株ETF(VYM・HDV等)は米国源泉徴収10%が残るため、完全非課税にはならない。 自分のポートフォリオがどちらの構成かを確認しておくと、非課税効果の見積もりと今後の銘柄選定の基準が定まりやすい。

3. 過去の配当明細を確認して損失規模を把握する

証券口座の配当金・分配金履歴に「税引後」の記載がある期間の控除額を合計する。設定ミスによる累計損失を把握することで、今後の追加投資額や方針見直しの判断材料になる。過去分の取り戻しはできないが、現時点から損失を止める動きは今日中にできる。

まとめ

「NISAは非課税」という言葉は正確だが、配当金については前提条件がある。株式数比例配分方式を選んでいなければ、成長投資枠を使っていても配当金の手取りは通常口座と変わらない。制度の説明が不十分なせいで、気づかずに損し続けているケースは少なくない。

自分も口座開設時に設定を案内されなかったため、半年間気づかなかった。金額にして1.5万円超を課税されていた計算だ。設定変更は一度やれば終わりで、その後ずっと効いてくる。投資信託の銘柄選定やNISA枠の使い方を考える前に、まずここを直しておくのが筋だと思っている。

証券会社のマイページを開いて「配当金受取方法」を確認する。それだけで来年以降の手取りが変わる。


本記事の試算はあくまで参考値です。投資にはリスクが伴います。個別の投資判断はご自身の状況に合わせてご判断ください。