会社員の固定費の中で、見直しによる削減効果が最も大きいのは生命保険だと思っている。

住宅ローンや家賃と違って、保険は「契約した瞬間から払い続けるもの」という感覚になりやすい。自分も30歳のとき、営業担当者に言われるがまま医療保険・死亡保険・就業不能保険・がん保険を組み合わせて、気づいたら月4.8万円(年57.6万円)も払っていた。見直すまで4年間、その状態が続いた。

実際に保険証券を並べて中身を精査したとき、「これ、社会保険と完全に重複している」という部分がいくつも出てきた。会社員は国民健康保険加入者や自営業者と比べて、社会保険による保障が圧倒的に手厚い。その前提を知っていれば、最初から不要な保険に入ることはなかった。

この記事では、会社員が持つ社会保険の保障内容を整理したうえで、年収・家族構成別に「削減できる保険料」を具体的な数字で試算する。

仕組み・背景を正確に把握する

会社員(正社員・フルタイムの一定条件を満たすパートなど)が加入する社会保険には、大きく分けて4種類の場面で保障が機能する。

① 病気・怪我で入院したとき

健康保険には「高額療養費制度」がある。医療費の自己負担が月の上限額(年収約370〜770万円の場合、月約8〜10万円前後)を超えると、超過分が払い戻される制度だ。手術や長期入院でも、自己負担が青天井になることはない。医療保険の「入院一時金」が多くの場合不要な理由はここにある。

② 働けなくなったとき(病気・怪我)

会社員には「傷病手当金」がある。病気やケガで4日以上休業した場合、標準報酬月額の約2/3が最長1年6か月支給される。年収600万円(月給50万円)の人なら月33万円前後が保障されることになる。

③ 障害が残ったとき

厚生年金には「障害厚生年金」が含まれる。障害等級1〜3級と認定されれば年金が支給される。自営業者の「障害基礎年金(1〜2級のみ)」より保障範囲が広い。

④ 死亡したとき

厚生年金の「遺族厚生年金」が支給される。国民年金の「遺族基礎年金(子のある配偶者または子に限定)」よりも対象が広く、支給額も多くなる傾向がある。

これらの制度が重なっている部分に民間保険を上乗せしているケースが、払い過ぎの主な原因だ。

具体的な数字で試算する

下表は「会社員として社会保険に加入している」前提で、年収・家族構成別に「現在払っている平均的な保険料」「見直し後の適正保険料」「年間削減額」を試算したものだ。平均的な保険料は生命保険文化センターの調査数値などをもとにした目安であり、個人の契約内容によって大きく異なる。

家族構成・年収(目安)現在の平均保険料(目安)見直し後の適正保険料(目安)年間削減額(目安)
独身・年収400万円月1.5万円(年18万円)月0.3万円(年3.6万円)約14万円
既婚・子なし・年収500万円月3.0万円(年36万円)月1.0万円(年12万円)約24万円
既婚・子2人・年収600万円月5.0万円(年60万円)月2.0万円(年24万円)約36万円
既婚・子2人・年収700万円月6.0万円(年72万円)月2.5万円(年30万円)約42万円

※見直し後の適正保険料は「死亡保障(収入保障保険)+最低限の医療カバー」に絞った場合の目安。実際の削減額は現在の契約内容・健康状態・家族構成によって異なる。

ポイントは「独身なら死亡保障はほぼ不要」という点だ。独身で扶養する家族がいなければ、自分が死んでも困る人がいない。医療費も高額療養費制度でカバーできる。残るリスクは「働けなくなること」だが、傷病手当金と障害厚生年金で相当程度カバーされる。

子どもがいる場合は話が変わる。収入の主な担い手が亡くなったとき、遺族厚生年金だけで生活費をまかなうのは難しいケースが多い。「収入保障保険(月10〜15万円・子どもが独立するまでの期間)」は残すのが現実的だ。それでも月2〜3万円で足りることが多く、既存の5〜6万円より大幅に削れる。

今すぐやること4つ

  1. 社会保険の保障内容を自分の数字で確認する ねんきんネット(日本年金機構)にログインすると、自分の遺族厚生年金・障害厚生年金の見込み額が確認できる。傷病手当金は標準報酬月額の約2/3なので、給与明細の「標準報酬月額」欄の数字から計算できる。ここを先に把握しないと「必要な保障額」が計算できない。

  2. 手元の保険証券を全部並べて重複を確認する 保険証券がない場合は生命保険協会の「契約照会制度」で契約一覧を取得できる。並べたら、①社会保険でカバーされる部分、②民間保険でないとカバーされない部分、の2列に仕分ける。重複している特約(三大疾病特約・就業不能特約など)が見えてくる。

  3. 不要な特約だけを外す手続きをする 契約している保険会社に連絡して「特約の解除」を申し込む。保険本体を解約しなくても特約だけ外せることが多く、月数千円〜数万円が削減できるケースがある。特約の解除は書類1枚で完結することが多く、担当者に頼めば手続き書類を送ってくれる。

  4. 死亡保障が必要な場合は「収入保障保険」に乗り換える 終身保険や養老保険の死亡保障は割高になりやすい。「収入保障保険」は死亡後に毎月一定額が支払われる掛け捨て型で、保険料が大幅に安い。子どもが独立する年齢で自動的に保障が終わる設定にすれば、不要な保障期間に保険料を払い続けることもなくなる。

まとめ

会社員の生命保険の払い過ぎは、社会保険の保障内容を知らないまま「念のため」で加入してきた結果であることが多い。

  • 高額療養費制度で入院・手術の自己負担は月上限額まで抑制される
  • 傷病手当金で最長1年6か月、月給の約2/3が保障される
  • 遺族厚生年金・障害厚生年金は自営業者より保障範囲が広い

自分は見直しで月4.8万円から月1.3万円に削減した。年間で42万円浮いた計算になる。その分を新NISAの積み立てに回した結果、生活水準は変えず、資産形成のスピードだけが上がった。

保険は「不安を買うもの」だ。不安の根拠を社会保険の内容で埋められる部分は、民間保険に頼る必要がない。まず社会保険の保障内容を自分の数字で確認することから始めるといい。