基礎控除が48万円から58万円に引き上げられた。副業をしている会社員にとって、この改正は「払う税額が減る」可能性を持つ一方、申告の仕組みを正確に理解しないと恩恵を取りこぼすケースもある。2025年分の所得(2026年2〜3月申告)から適用されるルールを整理する。副業をこれから始める人も、すでに動いている人も、今が仕組みを確認する絶好のタイミングだ。

仕組み・背景を正確に把握する

副業と確定申告の「20万円ルール」

会社員(給与所得者)が副業をする場合、副業の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要になる。ここで重要なのは「所得」の定義だ。

  • 収入(売上):クライアントや取引先から受け取った報酬の合計
  • 所得:収入 − 必要経費

副業の売上が30万円でも、交通費・機材費・ソフトウェア費用などの経費が15万円あれば、所得は15万円。この場合、所得税の確定申告は不要になる。「収入ベースで20万円」と誤解している人が多いが、正しくは「所得ベース」だ。

2026年の税制改正ポイント:基礎控除と給与所得控除の引き上げ

令和7年度税制改正(2025年分の所得から適用)で、基礎控除額が48万円→58万円に10万円引き上げられた。基礎控除とは、所得から無条件で差し引ける金額のことだ。

同時に給与所得控除の最低額も55万円から65万円に引き上げられた。この2つを合わせると、いわゆる「103万円の壁」は「123万円の壁」に変わる。

控除の種類改正前(2024年分)改正後(2025年分〜)
基礎控除48万円58万円
給与所得控除(最低額)55万円65万円
合計(最低ライン)103万円123万円

なお、合計所得が2,400万円を超える高所得者は基礎控除が逓減・消滅するため、恩恵が薄くなる点には注意が必要だ。

住民税の「20万円ルール」は存在しない

見落としやすい落とし穴がある。所得税の申告不要ルール(年間所得20万円以下)は、住民税には適用されない。副業所得が1円でもあれば翌年6月の住民税に上乗せされる。確定申告をしない場合でも、市区町村への住民税申告が別途必要になるケースがある。

具体的な数字で試算する

副業所得30万円のケースを例に、給与年収別の税負担の目安を整理する。所得税率は各給与年収帯の限界税率(目安)を使用。実際の税額は個人の控除状況や家族構成によって異なるため、あくまで参考試算として活用してほしい。

副業所得30万円・年収別の税負担試算

給与年収所得税率(目安)副業30万円への所得税(試算)住民税(一律10%)合計税負担(試算)
300万円5%約1.5万円約3万円約4.5万円
500万円20%約6万円約3万円約9万円
700万円23%約6.9万円約3万円約9.9万円
900万円33%約9.9万円約3万円約12.9万円

年収が高いほど副業収入にかかる税率は上がる。年収500万円で副業所得30万円なら、手取りは試算で約21万円になる計算だ。

基礎控除アップの節税効果(年収500万円・副業所得50万円のケース、試算)

項目改正前改正後
基礎控除48万円58万円
課税所得の変化10万円圧縮
所得税軽減額(税率20%の場合)約2万円の節税(試算)
給与所得控除アップ分の効果さらに約2万円(試算)

基礎控除と給与所得控除の両方が上がることで、合計4万円程度の税負担が軽くなる可能性がある(試算)。この恩恵は確定申告を正しく行うことで初めて得られる。

今すぐやること4つ

1. 副業の「経費」を今すぐ記録し始める

領収書・支払い明細を月ごとに整理する。副業に使ったフリマアプリ手数料、通信費の一部、PCや周辺機器の購入費なども経費に計上できるケースがある。クラウド会計ソフト(freeeやマネーフォワード クラウド確定申告など)を使えば、銀行口座やクレジットカードと連携して自動記録できるため、年末に慌てずに済む。

2. 所得が20万円を超えそうなら確定申告の準備を前倒しにする

副業所得(収入−経費)が20万円を超える見込みなら、確定申告(2027年2〜3月)の準備を今から始める。マイナンバーカードがあればe-Taxでオンライン完結できる。源泉徴収票、副業の収支記録、経費の領収書を今のうちに一箇所にまとめておくだけで、申告時の負担が大きく変わる。

3. 住民税の扱いを確認する

副業所得が20万円以下で確定申告をしない場合でも、住民税の申告が必要か市区町村に確認する。確定申告をする場合は自動的に住民税にも反映されるが、勤務先に副業収入の金額を知られたくない場合は、住民税を「普通徴収」(自分で納付)に変更する手続きが有効だ。

4. 所得が継続的に増えるなら青色申告を検討する

副業の年間所得が安定して20万円を超えそうなら、税務署に「開業届」と「青色申告承認申請書」を提出することで、青色申告特別控除(最大65万円)が使える。年収500万円で副業所得50万円の場合、青色申告特別控除65万円を適用すると課税所得をゼロにでき、所得税と住民税を合わせて最大16.5万円程度の節税効果(試算)が見込める。

まとめ

  • 令和7年度税制改正で基礎控除が48万円→58万円、給与所得控除も引き上げ。「103万円の壁」が「123万円の壁」に変わった
  • 副業の「20万円ルール」は所得(収入−経費)ベースで判断。収入ベースではない
  • 年収500万円・副業所得30万円なら所得税+住民税の合計は試算で約9万円
  • 住民税は20万円以下でも申告が必要なケースがある点を見落とさない
  • 経費の記録と青色申告の活用が、副業の手取りを最大化する最短ルート

税制改正の恩恵を受け取るには、正確な申告が前提になる。副業を始めたばかりの段階から経費記録の習慣をつけておくことが、長期的な手取り最大化への確実な一歩だ。